2018年2月25日日曜日

左室内血栓に対する抗凝固療法 EBMって窮屈だと思う

図1 初診時ECG

図2 心エコーでの血栓像
 10年ほど前の初診の方です。受診の理由は心電図異常を指摘されたからです。症状はありません。心エコーで中隔肥大を認め心尖部は瘤状にDyskinesisでした。お近くの循環器の開業医にフォローをお願いしていました。

10年近く経て、また来られました。カテーテル検査を勧められた由で本当に必要かと意見を求められました。その時の心エコーが図2です。以前のDyskinesisであった心尖部に丸い血栓像を認めます。

図3はCTでみた左室です。当然ですが心尖部に血栓像を認めます。冠動脈には狭窄を認めませんでした。カテーテル検査はしなくても良いとお話ししました。

図3 CTでの血栓像
ただ左室心尖部の血栓が原因で脳塞栓を起こさないように抗凝固療法が必要だと説明しました。抗凝固療法ですが、非弁膜症性心房細動以外にXa阻害剤は適応はありません。厚生労働省が認可した用法用量を順守すればワーファリンによる抗凝固療法しか選択肢はありません。ワーファリンと同じような抗凝固の効果が得られ、出血のリスクの少ないXa阻害剤の方が良いと考えこの方にはEdoxabanを処方しました。

3月後の評価で心尖部の血栓は完全に消失しその間に塞栓症のエピソードもありませんでした。

比較試験が実施された心房細動患者や静脈血栓症に対するXa阻害剤は認められてもこのケースではXa阻害剤の使用は認められません。Evidence based medicine(EBM)は科学的根拠に基づく医療とよく翻訳されます。実際には統計学的根拠に基づく医療です。機械弁の入っていない心内血栓に対するXa阻害剤の効果を検証した統計学的なデータはなくても科学的な根拠がない訳ではありません。

そんなに多くないこのようなケースでXa阻害剤が有効で安全であると統計的に証明する研究など未来永劫実施されるはずはありません。

教条主義的に統計的な裏付けがある治療しかしてはならないというのではレアケースの治療は前進するのでしょうか。EBMを否定しようとは思いませんが、EBM一神教のような医療のありようは窮屈で仕方がありません。いつかこのようなケースに対するXa阻害剤の使用も公知の治療として認められるとよいのですが…

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